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私のヨーロッパ日記

2016年4月19日から5月3日までヨーロッパを周遊しました。その日記です。

4/19 大阪からアムステルダムへ

アムステルダムについたのはほぼ定刻通りの午後3時過ぎだった。久しぶりの12時間弱のフライト。養鶏場のニワトリのように狭い座席に押し込められ定期的に水や餌を与えられる12時間は本当に長く、疲れきっていた。また、隣の席に座っていた若い男が、うたた寝をするたびになんどもこちらにもたれかかってき、臭い整髪料のついた頭を何度もこちらの鼻先に押し付けてくるものだから、気分も最悪であった。

入国審査場ではびっくりするほどの長蛇の列に並び、スーツケースは自分のものだけなかなか出て来ずと、さっそくこの国のすべてを恨みたくなるような出来事が続き、本当にくたくたになってやっと外の世界に出た。すると、そこには生まれて初めてのヨーロッパがあった。まさにヨーロッパだった。日本ならば、すべてのものの影を消し去るほど煌々と蛍光灯が焚かれ、極彩色の広告がそこかしこに踊っているものだが、こちらはあくまで窓からの自然光と最低限のライトだけが頼りで薄暗い。そして、その中をせわしなく行き交う旅客たちは、それらの光に対する影として視覚に飛び込んでくる。モノトーンの世界の中、行き交う光と影はとても美しく、思わず声を上げずにいられなかった。

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しばらくそんな風景をベンチに座りながらぼやっとみていたが、それよりもなによりも、自分が一文無しなことに気づいた。ユーロを持っていない。で、キャッシュカードでATMから現金を取り出そうとするもなぜかエラーで使えない。とにかく空港から市内に向かおうとクレジットカードで列車の切符を買おうとするもなぜか買えない。なんとヨーロッパ周遊1日目から詰みである。まあこんなとき何が吉と出るかわからないもので、もう一度一か八かで試してみるとなぜか切符は購入できた。なにかヨーロッパの神か悪魔に弄ばれているような感じを受けつつも地下に降り、列車に乗ったら次の試練が待ち受けていた。スーツケースから突然バリっという音がし、あらぬ方向へバタンと倒れたのだ。なんだと見てみると、4つあるキャスターのうち一つが破けて取れていた。着いた途端にこれかよと、アムスへ向かう列車では車窓を楽しむ余裕もなく旅の前途を憂う他なかった。

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キャスターが壊れたスーツケースをとにかく持ち歩きたくないので、予約していたホステルにチェックインすることにした。ホステルはアムステルダム中央駅の北側にあるアイ湾を渡る無料の船に乗ってから歩いて5分ばかりの場所にあった。さっそくチェックインをし、残念なことになったスーツケースをドミトリーの部屋に置いた。4人部屋のベット一つが一泊25ユーロ。安い。疲れていたが、まあとにかく街へ出ようと、また船に乗りアムステルダム中央駅へ。そこでまだユーロが手に入っていないことに気がついた。まあなんとかなるだろうと、街を散策することとした。

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 アムステルダムは本当に美しく、そして可愛らしい街だった。この後、向かうことになるベルリン、プラハ、パリ、ロンドンと比べて、華奢でキュートな印象を受ける街だった。運河沿いに並ぶ切妻屋根の色とりどりの住居はどこか学芸会の書き割りを彷彿とさせて非常にキッチュな印象をもった。いうならば街全体が舞台のセットのようなのだ。多分物語は少し楽天的な。

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 そんな街角で香るのがマリファナだ。オランダではマリファナが合法で、いたるところにマリファナを販売するコーヒーショップがある。ちょっと中を覗いてみたが、あの青臭いマリファナの匂いにたまらずすぐ出てきてしまった。とにかくコーヒーショップはどこにでもあり、マリファナタバコを吸いながら歩いている人はとても多い。広場の芝生の上でマリファナを吸いながら日光浴しているグループを見て、なんとも微笑ましいような何か違うような、不思議な気分になった。 

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そんな風景の中をふらふら歩いていると、もう一つのオランダ名物、飾り窓地区に到着した。いわゆる赤線地区だ。大きな古い教会を中心として赤い蛍光灯が灯っているガラス扉が並ぶ街並みがあり、夜になるとそのガラスの向こうに淫靡な下着をつけた女性が客引きをするらしい。春のヨーロッパの日が暮れるのは遅く午後9時くらいになってやっと暗くなる。着いた時は6時ごろだったのでまだガラス窓の向こうには誰もいなかった。夜にもう一度来ることにして、疲れたのでホステルに戻ることにした。 

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 アムステルダム中央駅に戻り、もの試しとATMでもう一度キャッシュカードでお金をおろしてみたら今度は上手くいった。さっきはなんだったんだと思いながらも、だんだんと旅が軌道に乗ってきたような感じを受ける。そして中央駅の北側から船に乗りホステルへ。

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部屋に戻ると誰もいなかった他のベッドに荷物が置かれていた。変な人でなければいいが、と思いつつ少しベッドで休んでからまた街へ。そしてまた船に乗り込み中央駅へ。日暮れのアイ湾はとても美しかった。 

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 再び街を散策し、暗くなった飾り窓地区へ。びっくりしたのが、人で街が溢れかえっていること。老若男女の様々な人種が合法的売春現場を「観光」しているのだ。日本の大阪にも飛田新地という法の抜け穴をついたような現役の赤線地帯があるが、あそこを歩くのはだいたいが性に飢えた男たちで家族連れなどもってのほかだ。ところがこちらでは、同じ売春地帯にもかかわらず、まるでアミューズメントパークのように様々な国から来た人たちがガラス扉の後ろ側でポーズを決める売春婦たちを見学しているのだ。売春婦に見とれて覗き込んでしまった旦那さんの耳を、奥さんを引っ張るといったようなまるでコントのような光景をいろんな人種が繰り広げるのを何度も見ることが出来て、本当に嬉しくなってしまった。

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この飾り窓地区はとても広く、何百人という世界中から来た売春婦たちがここで商売しているのだという。飾り窓地区の中心には売春婦たちを支援するボランティアたちの事務所があり、そこでこの地区の概要を学ぶことができる。

その事務所によると、彼女たちは毎日飾り窓の賃料として60ユーロから100ユーロを払っており、一人の客を取るとそのプレイに応じて50ユーロから100ユーロ得るのだという。なので1日最低二人の客を取らなければ赤字というわけになる。 

また、この仕事を始めるには市役所に登録をする必要があるそうで、税金も払い、社会保険なども支払う必要がある。それほど簡単に稼げる仕事ではなさそうだ。 

このような彼女たちをサポートするボランティアたちの事務所はアムステルダムだけでなくオランダ各所にあり、彼女たちの人権やお金の問題を援助しているのだという。(興味のある方はそのうちの一つであるP&G292のサイト https://www.pg292.nl/en/ を参照のこと) 

オランダでは性に対してとても先進的なようで大人のおもちゃ屋やコンドーム専門店が堂々と軒を連ねるだけでなく駅のコンビニエンスストアではコンドームだけでなくピルまで販売している。またバイブレーターやローションといった大人のおもちゃ系まで売っているのにはびっくりしてしまった。ただしこれを見て日本よりも性に対してオープンかと判断するのはどうかとも思った。日本のように電車の吊り下げ広告に扇情的な女性のセミヌードが踊っているのもどっこいどっこいではないかと思うからだ。ああいうのは他の国ではあまり見たことがない。 

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 まあそんな感じで赤線地帯を練り歩き、遅い食事をとり、また船にのりホステルに戻ったのは深夜12時過ぎ。時差の影響もあり、とんでもなく長い1日でiPhoneの記録によるとなんと30Km以上歩いていた。疲れてカードキーをタッチし部屋に入ると、なんとバスタオル一枚だけの半裸の女性が音楽に合わせて踊っていた。びっくりしてすぐさま出て行き部屋番号を確かめる。やはり自分の部屋だ。今度はノックをする。内側から声が聞こえた。「オーケー」中にはいると、バスタオル一枚だけだった女性がTシャツとショートパンツを履いて出迎えてくれた。初老の女性もいた。どうも母娘で旅行に来たようだ。「どうも、今晩お世話になります」などと挨拶する。向こうもにこやかだった。あまり英語が通じなかったが、まあ悪い感じではなかった。シャワーを浴びて、ベットに入り、今日1日を振り返った。とにかくとんでもなく長く、疲れる1日だった。ただとても楽しい1日でもあり、とても刺激的な1日でもあった。最後のバスタオル一枚だけの女性も含めて。