私のヨーロッパ日記

2016年4月19日から5月3日までヨーロッパを周遊しました。その日記です。

5/3 さよならヨーロッパ

行ってみて実感したのは、ヨーロッパは本当に多民族体だということだ。大きな街に足を運ぶと様々なバックグラウンドを持つ人々が集まっている。アフリカ、中東、アジア、ヨーロッパとまるで人種のカタログだ。パリを歩いていると様々な民族衣装を見てとることが出来るし、ポンピドゥーセンター前ではアフリカから来た人達が集まりアフリカの歌をみんなで歌っていたりする。他の街もそうだ。街を歩くと常に複数の言語が聞こえてくる。バイリンガルなんて当たり前、トリリンガルも珍しくない。またミックスの人達も普通にいる。東アジアで言えば日中韓朝の国境が希薄化し、それぞれの言葉を二つ以上話すのが当たり前、ミックスであってもそれが普通、そんな世界がヨーロッパだった。

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EU市民であればEU区域内での移動と居住の自由が認められる。居住国であれば国籍が異なっていても市区町村選挙に立候補できる。どの加盟国の外交機関、領事機関の保護を受ける事ができる。国籍によって差別されない。そう明文で謳うのがEUの基本条約のうちの一つ「欧州連合の機能に関する条約」である。この仕組みにより文化のミクスチュア化が加速度的に進んでいる。

そんなヨーロッパで2015年11月13日、発生したのが、パリ同時多発テロだった。死者130名負傷者300名以上という大惨事だった。

この同時多発テロにおいて一番被害の大きかったのがバタクラン劇場だ。ここだけで少なくとも89人の方が亡くなっている。

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実際に足を運んでみると、観光客が普通に足を運ぶ場所であったことに改めて驚いた。パリの若者が集まるマレ地区から観光地としても有名なサンマルタン運河へ向かおうとすると、普通にこのあたりを通ることとなる。足を運んで地理関係を把握すると、このテロ事件の本当の恐ろしさがよくわかる。普段の街で大殺戮が発生したのだ。犯人は移民としてベルギーに入り、シェンゲン協定区域であるゆえにフランスにフリーパスで武器を持ってやって来れたのだ。

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ヨーロッパは、今まさに自分達の進めてきたボーダーの開放路線によって想定されたリスクの大きさを突きつけられている。

また、テロだけでなく難民の受け入れ問題もヨーロッパにおける大問題だ。バルカン半島の国々のボーダーは押し寄せる移民で麻痺状態だ。

テロと難民、この二つが現在のヨーロッパに漂う大きな暗い影だ。どちらも中東の政治的失策という根本原因は同じなのだが、EU内でコントロールできる問題でない為、解決するのは難しい。

ただこういった問題はヨーロッパにとって以前から容易に想定できたリスクである。そのリスクが現実のものと化した今でも政策の調整はあれど、ヨーロッパが移動居住の自由という原則を見直さないのはなぜだろうか。それは、ヨーロッパ自身がこれまでの歴史の中で様々な文化が混じり合ったからこそ享受できた価値を非常に重視しているからに他ならないと感じた。今回、様々な美術館や博物館を訪れたが、本当に様々な文化が様々な文化的背景を持つアーチストによって表現されていることがわかる。ヨーロッパの芸術家が一つの国に留まるのは珍しい。複数の国に住むのが普通だ。例えば、ゴッホはオランダ生まれだがイギリス、ベルギー、フランスと移り住んだ。ピカソもスペイン生まれだが、フランスに長くいた。舞台もそうだ。ヨーロッパの芝居では単一国籍の人間だけで構成される舞台なんていうのはほぼない。複数の文化的背景がミクスチュアされることで引き起こされる化学反応が生み出したヨーロッパの傑作は数えることができないほどだ。

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芸術の範疇だけではない。ビジネスにおいても職場が多国籍であることも当たり前。外国人と外国語でやり取りするのが当然の世界だ。

そんなヨーロッパの歩みを踏まえれば、ヨーロッパにおけるボーダーの希薄化という趨勢は、テロと移民のリスクがあったとしても、調整はあれども方向が変わることはないだろうと考える。何よりもそんな自由なヨーロッパが好きだ。と旅行中に何度も感じた。

 


 

これで今回の旅行記は全て終わる。正直言って長い15日間だった。毎日、濃く充実した日々を過ごせたが、その分しっかり疲れてしまった。今回は初めてのヨーロッパだったので、好奇心が勝ってしまい、足を棒にして歩き回った。なんせiPhoneの記録によると毎日最低20kmは歩いていたのだからそりゃ疲れる。

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また、今回の旅行では本当に多くの美術館や博物館を訪れた。またコンサートや人形劇、ミュージカルとたくさん舞台も見た。全てが一流のものだった。本気で取り組んだ仕事の結果生まれた傑作ばかりだった。小手先の作品はいとも簡単に見破られるのだ。いくら才能があったとしても自分の仕事に誇りを持ち本気で取り組まなければ一流の作品を創り出すことは不可能であることに痛いほど気付かされられた。

今回の旅行の前、私事で様々なことがあり、何においても力が出せなくなってしまっていた。ヨーロッパの各地で見た後世に残る傑作たちはそんな私を本当に勇気付けてくれた。力を与えてくれた。これからどうするにしても、幾つになっても真剣に本気で取り組むことが大切なのだ。と教えてくれたように思えた。

それが今回の旅の最大の収穫だったように思う。さあ頑張ってみるか。そしてさよならヨーロッパ。また会う日まで。

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